豊かな知識と深い洞察力で読み解く日中メディア文化

香取淳子のアニメ日誌
アニメといえば、日本の牙城だという印象がありましたが、近年、急速な勢いで中国アニメが台頭してきました。すでにアニメ生産量では中国がトップです。日本アニメは少子高齢化、メディア環境の激変、等々の外部要因によって岐路に立たされています。そこで、メディア文化の一つとしてここではアニメを取り上げます。日本アニメと中国アニメに関するさまざまな情報を香取淳子がランダムにブログ形式で提供していきます。


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ブログ

「アナと雪の女王」を支えた日本人アーティストたち

■大ヒットした「アナと雪の女王」

2013年11月27日に米で公開された「アナと雪の女王」は大評判を呼び、今年の米アカデミー賞の長編アニメーション部門と主題歌部門をダブル受賞しました。今年3月14日、日本でも公開され、連日、動員数を増やしていました。私も3月29日、この映画を鑑賞しました。エンターテイメント作品として非常に優れていると思いました。とくに印象に残ったのが、氷や雪、霜などの白一色の世界の表現です。

視聴後の感想はこちら。http://jc-media.org/?m=20140329

大人の鑑賞に耐えるアニメだと思った理由の一つは、識別しにくい白の世界を圧倒的な迫力で描き出した技術力でした。リアルな世界では決して見ることのできない凍てついた世界。これほどまでに美しいとは思いませんでした。感動させられたのは、この卓越した映像表現力でした。さすがディズニーだと思ったものです。

■日本人アーティストたちの仕事

沖縄タイムズ(2014/3/13)によると、久米島町出身の糸数弘樹氏がディズニー映画「アナと雪の女王」で、デザイナーの描いたスケッチを立体に起こす作業を担当していました。いわゆる3Dモデラーです。私が感動した雪や氷柱、壊れた帆船、背景の山や海岸などを担当したそうです。

糸数氏は「コンピューターソフトでつららを作ることはできるんですが、自動的に作ってしまうと、どうしても機械的な見た目になってしまうんです。アーティストのスケッチのようにはうまくできない。なので、モデラーが結局、全部手直しをして、アーティストのデザイン通りにつららを1本ずつ直していくんです。かなり地道な作業です」と語っています。(スポニチ アネックス、2014/5/4)

モデラーの仕事についてはこちら。https://www.facebook.com/permalink.php?id=433416190050585&story_fbid=489635971085301

糸数氏ばかりではありません。アニメーターとして制作に関わったのが、ミユキ・カンノ氏です。彼女が担当したのは、ヒロイン、アナです。冒頭でアナが「いつか王国を出て、世界を変えたい」と歌うシーンを手掛けました。アナがブランコに乗るシーンは自分でもブランコに乗って夫に撮影してもらい、その映像を参考にしながらリアルな動きを作り出したといいます。

さらに、マット鈴木氏は、アニマティック/レイアウトを担当しています。鈴木氏は、「もともと出身が雪国で、特に今回は雪や氷が主役クラスで描かれるので、このエフェクトのアニメーションは非常にエキサイトしています。カメラワークは責任重大。光が回らなかったりしたら、責任重大ですから。いかに美しく見せるかということを大切にしていますので、そこをぜひとも注目してもらいたいなと思います」と語っています。(スポニチ アネックス、2014/5/6)

そして、土井香織氏。彼女は3Dライティングを担当しました。苦労したのは水や氷だといいます。透明なものほどライティングは難しいといいます。土井氏は「ライティング担当は3人いるんですが、3人が全く同じライティングをしないといけない。(監督に)1コマ1コマずつチェックされて、またやり直してといった具合でした」と語っています。

以上、詳細はこちら。http://matome.naver.jp/odai/2139635800728998401

■ディズニーを支えた日本人のものづくり精神

日本人アーティストだからこそ、このように緻密な制作ができたのでしょう。徹底的に完成度を高めるという精神です。それがディズニーの作品の魅力を確かなものにしたのです。デイズニーは、”共感できるストーリー”、”魅力的なキャラクター”、”現実味のある世界”、これら3つの要素を重視して映画製作をしているといわれています。その一つである”現実味のある世界”、これを実現させたのが日本人アーティストたちだったといえるでしょう。その結果、この作品はいまなお世界中で観客を動員し続けています。歴史に残る作品になることは確かでしょう。(2014/5/8 香取淳子)

 

『宇宙戦艦ヤマト』と『宇宙戦艦ヤマト2199』

『宇宙戦艦ヤマト2199』の原画展が、4月22日から5月7日まで池袋西武デパートで開催されています。下の写真は会場付近の柱に張り付けられていたポスターです。

IMG_0913 (640x480)

■画期的な作品だった『宇宙戦艦ヤマト』

1974年、テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』が放送されて以来、一気にアニメファンの年齢が上がりました。子ども向けのアニメから少年や青年が見て楽しめる動画になっていたからです。

その第1作をベースにリメイクされたのが『宇宙戦艦ヤマト2199』です。こちらは2013年4月7日から9月29日まで、全26話がMBS、TBS系列で放送されました。そのキャラクターデザイン、メカニカルデザインの原画展が今回、池袋西武で開催されているのです。

■いま見る『宇宙戦艦ヤマト』

『宇宙戦艦ヤマト』はそれまでの子ども向けアニメの概念を変えるような画期的な作品でした。いまなおファンが多いのはそのせいでしょう。とくに、メカニックなことに関心を寄せる少年、青年の心を捉えて離さなかったのです。

当時の作品を見ると、懐かしくなってしまうのですが、残念なことに、画質が良くないのでなかなか以前のようには引き込まれて見ることができません。高画質、高音声の視聴覚コンテンツを見慣れてしまったからでしょう、内容よりもまず、そのことに目がいってしまうのです。

たまたまYoutubeで当時の映像を見つけました。

第1作はこちら。 https://www.youtube.com/watch?v=_-EXtvMwJoA

ストーリーはいま見ても、しっかりしていますし、キャラクターデザインもとても惹きつけられるのですが、画質、音声はやはり見劣りしてしまいます。改めてアニメがテクニカルな側面に支えられたコンテンツだということがわかります。

ただ、テクニカルな側面を向上させたとしても、ストーリーやキャラクターデザインに魅力がなければ、ファンを引き付けることはできません。

■『宇宙戦艦ヤマト2199』

それでは、『宇宙戦艦ヤマト』をベースに制作された『宇宙戦艦ヤマト2199』はどうなのでしょうか。動画を探してみました。

第1部はこちら。 https://www.youtube.com/watch?v=2SdtTw-efCE

テレビの視聴率をみると、第1話が関東5.7%、関西5.9%、それ以降は2~4%だったといいます。これらの数字はそれほど高くないように見えますが、アニメでは1位~2位を占めていたようです。つまり、リメイク版も成功したということなのでしょう。だからこそ、劇場版が2014年秋に公開されることになったのでしょう。

■ファン層の成長

『宇宙戦艦ヤマト』はそれまで子ども向けというイメージだったアニメの認識を大きく変えました。当時、青少年にまでファン層を広げることになったのです。今回のリメイク版もその流れを引き継いでいます。青少年が抱くメカニックなものに対する関心に呼応しようとしたのでしょう、ポスターの絵柄も戦艦にスポットを当てた構成になっています。

原画展の会場で列を作っていたのは、中高年男性たちでした。アニメが時代のシンボルとして存在し、時代とともに息づいていることがわかります。娯楽の少なかった『宇宙戦艦ヤマト』から多様な娯楽があふれている今秋、公開される『宇宙戦艦ヤマト2199』がどの層にどのように受け入れられるのか、等々に注目したいと思います。(2014年4月30日 香取淳子)

 

ディズニーに学ぶ集客力

ディズニーに学ぶ集客力

ディズニー映画といい、東京ディズニーランドといい、ディズニーはいまなお新鮮で、幅広く日本人の気持ちを捉えているようです。はたして、なぜか。その背景を探ってみたいと思います。

■ディズニーランド&ディズニーシー、合わせて6億人突破

2014年4月12日、ディズニーランドとディズニーシーへの入園者数が開園以来、6億人に達したと報道されました。開園されたのが、1983年4月15日の開園ですから、31年間でこれだけの動員数を果たしたことになります。

開園以来2010年までの入場者数の推移を示したのが下のグラフです。

 

資料:http://tdl-web.blogspot.jp/2011/04/blog-post_19.html

これを見ると、2001年から2002年にかけて入場者数は急増し、以後、高止まりしています。なぜ、2001年に急増したかといえば、2001年9月4日にディズニーシーが開園したからでした。以来、入場者数が高止まりしているのは、ディズニーが顧客満足度の高いサービスを提供しているからでしょう。

オリエンタルランドはIR情報として、入場者数の推移と各年度のイベント等の関連を示すデータを公開しています。この資料からなぜ、ディズニーの観客動員力が高いのかを考えてみたいと思います。

■データから見る動員数の推移

オリエンタルランドのIR資料室が発行しているファクトブックをみると、入場者数の増加は記念イベントの開催と密接に関係していることがわかります。

たとえば、1984年に開園して以来、年間1000万人程度だった入場者数が1989年には一挙に340万人ほど増加しています。それはこの年に開園5周年イベントが開催されていたからであり、また、舞浜駅が開業してアクセスしやすくなったからでした。グラフを見ると、なぜ動員数が増えていったのか、その理由がはっきりとわかります。

以後、毎年ほぼ1600万人から1700万人が入場していますが、2001年9月4日にディズニーシーが開園してからは一挙に2200万人台になりました。そして、翌年以降、入場者数は2500万人前後で一定しています。さらに、ディズニーリゾートが25周年を迎えた2009年には2700万人を超えています。大きなイベントが開催された年度に入場者数がぐんと増えている傾向が見られます。

ファクトブックはこちら。http://www.olc.co.jp/ir/pdf/factbook/2013/factbook_05.pdf

全体を通していえることは、1984年以降、一貫して入場者数が増え続けているということです。だからこそ、累計で6億人を突破するまでに至ったのでしょうが、その背景に何があるのでしょうか。

■ディズニーに学ぶファンと顧客の増やし方

4月16日、練馬区産業経済部経済課主催で講演会が開催されました。ディズニーで長年、社員教育を担当してきたJSパートナー代表取締役の福島文二郎氏が演者で、講演のタイトルは、「ディズニーに学ぶファンと顧客の増やし方」です。

なぜ、ディズニーランドはこれほどまでに人々をひきつけているのでしょうか。福島氏の話で最も印象に残ったのが、入場者に小さな感動をたくさん提供するということだということでした。それが予想外の感動を生み出す可能性につながり、幸せを感じてもらえるようになるというのです。

一方、ディズニーランドで働く人々は仕事に満足し、仕事を主体的に改善しようとする意欲を持ち続けているようです。ミスをすることがあれば、それはそのまま放置するのではなく、上司が叱ることによってミスが改善されていくだけではなく、新たなサービスになることもあったようでした。

ディズニーランドに行けば異次元の世界に浸ることができ、行かなくても、おそらく、夢のありかとして人々の心に存在することができているのでしょう。だから、これだけの入場者数を維持できているのだと思いました。映画だけではなく、ディズニーリゾートもまた夢を与えてくれます。つまり、ディズニーは一種の夢のブランドとして機能しているからこそ、いつまでも新鮮さを持ち続け、人々を引き付けているのでしょう。ディズニーの動員力の源泉は人々の夢見る気持ちを喚起する力ではないでしょうか。(2014/4/16 香取淳子)

 

 

 

 

 

『アナと雪の女王』:大ヒットの背景

『アナと雪の女王』大ヒットの背景

ディズニー映画『アナと雪の女王』が興行成績を更新しています。どうしてなのでしょうか。その背景を考えてみたいと思います。

■大ヒットを更新中

『THE PAGE』2014年4月7日付の情報によれば、4月6日までの累計動員は635万を超え、興行収入は77億円以上を記録したといいます。公開24日間で動員数600万人を突破したことになりますが、これは、ディズニー作品では、歴代No.1のペースなのだそうです。これで、100億円の大台を突破することは確実となり、今後どこまで数字を伸ばすかが期待されている状況だそうです。

さらに、本稿執筆の前日、13日時点で累計765万5206人、興行収入は92億8453万6150円になったということです。これだけ急速でかつ持続的な動員力はこれまでになかったことでした。これ様子では次週末までに100億円を突破するのは確実でしょう。

私も3月29日にこの映画を見て、惹きつけられました。迫力のある音楽、リズミカルな映像のテンポ、刺激的な画面展開といった要素が大人をも引き付けて離さないのです。作品全般の構成に切れ味がよく、卓越した映像技術、音声技術によってこれまでにない見ごたえのある優れた娯楽作品になっていると思いました。

『ぴあ映画生活』(2014年3月28日)によると、この作品は公開前から予告篇の映像を見た視聴者からネットで絶賛の声があがっていたようです。もちろん、先ほど述べたように、日本でも大ヒットしています。それではなぜ、この映画がこれだけヒットしたのでしょうか、資料を踏まえて、考えてみたいと思います。

■ヒットの背景①:家族中が楽しめる

まず、制作者側はどのようなスタンスでこの映画を製作したのか、みてみることにしましょう。ディズニー・アニメーション・スタジオの副社長・アンドリュー・ミルスタインは次のような見解をしめしています。

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観客に敬意を表して映画作りをするように心がけています。映画は観客と対話するものですからね。だから、観る方がそれぞれに解釈できるような作品づくりを心がけています。観た人それぞれが自由に解釈できるのが優れたアートの醍醐味ですから。

***********  以上、『ぴあ映画生活』(2014年3月28日)

公開後、多くの観客がこの映画について熱く語ったと彼はいいます。それは、この映画によって観客がなんらかの体験ができたからでしょうし、大きく引き込まれる要素があったかでしょう。あるいは、何か得体のしれない感情を喚起されたのかもしれませんし、意表を突かれる何かがあったのかもしれません。だから、見終えてもこの作品について誰かと話したくなる、意見をいいたくなるのでしょう。優れた娯楽作品ならではの観客の反応だったのだと思います。

「観た人それぞれが自由に解釈することができる」という要素が大きなヒットにつながったことは確かでしょう。私が見たのは字幕版だったので、20代以上80代(?)ぐらいまでが主な観客層でしたが、吹き替え版の時間帯は家族連れが多く見受けられました。「見る人がそれぞれ自由に解釈することができる」要素があるからこそ、連続5週も興行成績一位を維持できているのだと思います。つまり、幅広い層に受ける要素を含んでいることが重要です。

ネットを検索していて、以下に示すような興味深いタイトルの記事を見つけました。

「Critical Mass : We know the kids will like  ‘ Frozen’ , but will you?」(Inside Movies, Nov. 27, 2013)

これはアメリカでの公開日に書かれた文章です。このタイトルの中には大ヒットの要件が示唆されています。つまり、動員数の限界閾値に達するには、子どもが好きだというだけではなく、大人も好きになる要素がなければならないということです。そのような要素があれば、ある一定数を超えれば、それこそ天井知らずで伸びていくことも可能になります。

実際、中の文章を読むと、この映画は子どもだけではなく、パパもママも家族中が楽しめる要素が至るところに散りばめられていると書いています。アナ(Kristen Bell)とエルサ(India Menzel)雪だるま( Josh Gad)を演じた俳優たちが著名であるだけではなく、オリジナル歌曲は、『Avenue Q』や『The Book of Morton』などでトニー賞を受賞したRobert Lopez & Kristen Anderson-Lopez夫妻が作詞、作曲を担当しているのだそうです。大人の鑑賞にも耐えるよう緻密な工夫がされているのです。

■ヒットの背景②:タイムリーでタイムレス

この映画の監督を務めたのが、Chris Buck と Jennifer Lee です。彼らはどう考えてこの映画を製作したのか、記事から紹介しましょう。

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Chris Buck:

ずっとファンだったから、ディズニー・クラシックがもつ娯楽性やハート、音楽、楽しさは自然に表現できるんです。だから、物語やキャラクターに現代的な要素を盛り込むことで”タイムリー”であり、”タイムレス”な作品にしたいと思いました。

Jennifer Lee:

この映画には最新のテクノロジーがいくつも使われていますが、そんなことではアニメーションは特別なものにはなりません。私たちはアニメーションの視覚的な美しさや、異世界へと誘ってくれるような表現を愛しています。だから技術が進化しても、写実的にはしないであえて色彩を豊かにしましたし、雪であってもキャラクターの感情を表現できるように描きました。

*********** 以上、http://cinema.pia.co.jp/161214/56258/

Chris Buck 監督は、タイムレスとタイムリーな要素を重視しています。これまでのディズニーが持つ普遍的な要素(タイムレス)を引き継ぎながら、現代人の心を掴む現代的な要素(タイムリー)が欠かせないというのです。つまり、時代を超えてヒトの心に響く要素とその時代だからこそヒトの心をとらえられる要素が重要だというのです。

Jennifer Lee 監督も同様、過去のディズニー作品の要素を生かしながら、現代の観客の心を捉えられる作品づくりを目指したといいます。

興味深いのは、映画レポーターのTodd McCarthyがこの作品について以下のように述べていることです。

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この映画でもっともイライラさせられ続けたのは、脚本家の、主人公アナのセリフへのこだわりである。アナのセリフが一般的なアメリカのティーンズの口調をまねて作成されており、「you know」とか「freaked out」というようなセリフ、それ以外にも両親や姉エルサが使わないようなセリフが多かったことだ。アナはいったい、どこでそんなセリフを覚えたのだろうか?

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以上、http://hollywoodreporter.com/movie/frozen/review/652699

たしかに、一般庶民と接触せずに生活してきたアナがどうして、両親や姉エルサが使わないような言葉を口にしているのか、考えてみれば不思議です。この点について、字幕か吹き替えで視聴している日本人はそれほど気にならなかったと思いますが、このレポーターはそれが気になったようです。現代的要素を加えようとしたあまり、一部の観客には不評を買った側面もあったのではないでしょうか。

また、彼は主人公のアナとエルサの顔についても違和感を覚えています。他のキャラクターの顔はそうでもないのに、主人公二人が人工的で大きすぎる頬に小さな上向きの鼻の無邪気な顔をしているが、それはいかにも作り物っぽく見えるし、無表情で、慣れるのに時間がかかるともいっています。

私もこの映画を見たとき、アナとエルサの顔のデザインに違和感を覚えました。なかなか馴染めなかったのですが、時間が経つとかえって、この特異な顔が魅力的に見えてきたのです。

いわゆる「美しい」や「可愛い」顔ではなかったのも、ひょっとしたら、制作者側の意図だったのかもしれません。実際、私自身、主人公の顔に違和感を覚え、画面を注視しないわけにいかなかったのです。注視し続けてようやく、違和感から魅力への印象転化が可能になったのです。

 

■ヒットの背景③:これまでとは違った悪役の創出と配置

Jennifer Lee 監督にはストーリーやキャラクター設定にもこだわりがあったようです。

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もちろん、最初はエルサは悪役でした。基にしたアンデルセンの童話でもそうなっていますしね。でも、私たちが最も描きたいものは”愛”と”恐れる心”の対立で、魔女的なものを登場させると、どうしても”善と悪の対立”になってしまうんです。・・・(略)

思い切って”魔女”の要素を排除したら、急に自由度が増して”愛と恐れる心の対立”が現代の問題として描けるようになりました。

***********  以上、http://cinema.pia.co.jp/161214/56258/

このようにしてディズニー作品では定番だった魔女が悪役として主要な役割を演じることはなくなりました。ディズニーの伝統を踏まえながらも、陳腐になりがちで、現代人の心に響かない要素は排除したのでしょう。

ディズニー映画から典型的な悪役を排除したことに関し、Moira Elizabeth Mannard は、それがこの映画の成功の要因の一つだとエッセイで書いています。つまり、貴族であり、魅力的に見えるハンスは誰が見ても悪役には見えません。だからこそ、アナが留守中の城や住民の保護管理を頼んだのでした。それが最後になって実はそうではなかったということがわかります。そのようなぎりぎりのどんでん返しが興を呼んだというのです。

■ヒットの背景④:狂言回しの創出

さらに彼女は、雪だるまのオラフの設定が秀逸だったといいます。コミカルで場を和ませるだけではなく、「真の愛」に至るまでの展開で重要な役割を果たすからです。

 

 

オラフについて彼女は、子ども観客に向けて作られたキャラクターであり、子どものころのアナとエルサが作ろうとしていたものだといいます。

いわれてみれば、たしかに、ストーリーの最初で大きな役割を果たしたのは雪だるまでした。その後、アナがエルサを探す旅に出かける途上で出会ったのが雪だるまのキャラクター、オラフでした。以後、クライマックスに至る過程、物語の収束に向けての過程でもオラフは重要な役割を果たすキャラクターとして設定されています。

雪だるまのオラフは、熱くなればすぐにも溶解してしまい、常温でも存在できない異様なキャラクターです。それが一種の狂言回しとしてこの物語を展開させていくという役回りを担わされているのです。そこにこの映画の成功の秘訣の一つがあったとみるのは納得できます。とにかく、実際に見ていて、面白いし、このオラフが登場するだけで画面が和みます。

劇場で笑い声がおこるのも、オラフが登場したときでした。オラフのセリフ、一挙手一投足に異次元の可笑しみがあります。だからこそ、登場するだけで、観客の緊張は一気にほぐれ、溜まっていた感情が発散されてしまいます。優れた娯楽作品ならではのキャラクターの魅力とヒトの感情を喚起する力があります。

■大ヒットの秘訣

実際に映画を見たときに気持ちを踏まえ、さまざまな資料に基づき、この映画の大ヒットの秘訣を探ってみました。現時点では、とりあえず、①家族中で楽しめる、②普遍性と現代性、③新しい悪役の創出と物語の中での配置、④狂言回しの創出、等々、4つの要因がこの映画のヒットの背景にあることが考えられます。(2014/4/14 香取淳子)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Google歴史アーカイブ:手塚治虫の資料、ネットで公開

Google歴史アーカイブ:手塚治虫の資料、ネットで公開

■手塚治虫の資料、ネット公開

4月7日、手塚治虫の資料のコレクションが、「Google 歴史アーカイブ」(オンライン展示サービス)で公開されました。アトムの誕生日にあたる4月7日、「手塚治虫 テレビアニメ・黎明編」「手塚治虫 漫画の神様・復活編」「手塚治虫記念館」の3つの展示のほか、写真資料やイラスト、動画など、約170点の資料が公開されています。テレビアニメ元祖の業績が共有知として公開されたのです。新たな時代を迎えたといわざるをえません。

詳細はこちら。  http://tezukaosamu.net/jp/news/n_1402.html

 

貴重な資料を居ながらにしてみることができるのは研究者として大変、ありがたく、関係者の英断に喝采したい気持ちです。また、このようにしてネット上に資料を公開することによって、手塚治虫の業績がさらに広く、世界中で認識されていくでしょう。日本アニメの誕生を知ってもらういい機会になると思います。

たとえば、「手塚治虫 テレビアニメ・黎明編」で草創期、テレビアニメの制作に取組んだ手塚治虫の奮闘ぶりが写真や資料を通して伝えられます。若いころの手塚治虫、作業に励む手塚プロのスタジオ内部、『ある街角の物語』(1961年)の貴重な一カット、なども見ることができます。

1963年1月1日に放送開始された『鉄腕アトム』は、その第1話「アトムの誕生」の動画が公開されています。

http://www.google.com/culturalinstitute/exhibit/%E6%89%8B%E5%A1%9A%E6%B2%BB%E8%99%AB%E3%80%80%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%83%BB%E9%BB%8E%E6%98%8E%E7%B7%A8/ARJM85Ru?position=19%2C0

その後の白黒アニメ『W3』そして、カラーアニメの『リボンの騎士』といった具合にアニメーション技術の発展過程も見ることができます。

『鉄腕アトム』で未来の生活を描いた手塚治虫は、『ジャングル大帝』で大自然の中で自由にクラス動物たちの世界も描き出します。さまざまな領域にチャレンジし続けた手塚治虫の姿を見ることができます。

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■Google歴史アーカイブ

「Google 歴史アーカイブ」で公開されたので、いつでも自由に、パソコンの上で、上記の写真のように手塚治虫の制作に関する資料や写真を見たり、動画を視聴することができるのです。

著作権に縛られていれば、閲覧機会が少なくなり、幅広く知ってもらう機会を逃してしまいます。手塚治虫の場合、1989年に亡くなっていますから、氏の著作物の著作権保護期間は、現行法では2039年12月31日までということになります。とはいえ、このような形で公開されたことによって、現地に出向くことなく手塚治虫の世界に浸れることができますし、Googleならではのストリートビューで館内をめぐることができます。現在の技術を生かした展示といえるでしょう。(2014/4/8 香取淳子)

 

 

 

 

アニメの動員力:6月実施予定の池袋シネマチ祭

アニメの動員力:6月実施予定の池袋シネマチ祭

■アニメファンの街:池袋

日経新聞(4月4日付)が、池袋の映画館等が6月にアニメを中心にした映画祭を開催すると報じました。アニメグッズなどのサブカルチャー関連店舗が集積している池袋は、近年、「アニメファンの街」としての存在感が高まっているといいます。そこで、6月6‐8日、5つの映画館とアニメイトが中心になって、池袋シネマチ祭を開催するというのです。

アニメイトは、アニメ、コミック、ゲームなどの関連商品の販売を手掛けるチェーン店で、島根県を除く46都道府県に店舗を置く、国内最大手の企業だそうです。その本店が池袋にあり、池袋本店にはアニメ映画を上映できるホールもあります。

シネマチ祭ではアニメ映画を上映するだけではなく、声優や監督のトークイベント、ファンの交流、アニメキャラクターに扮して街の清掃を行う「コスプレ大清掃」などのイベントも予定されています。アニメといえば秋葉原と思っていただけに意外です。

■エリア全体の魅力

日経新聞によれば、池袋の映画館がこのような企画を打ち出した背景には都内で映画館の閉館が相次いでいることへの危機感があるようです。たしかに、大画面、デジタルドルビー音声のシネコンにはスクリーンがいくつもあり、そこで映画を見慣れてくると、これまでの映画館が物足りなくなります。エリア全体の魅力を高めなければ、映画館が単独で生き残るのは難しくなってきたというのは事実でしょう。

その映画も近年は、アニメが興行収入トップであることが多いといいます。たとえば、『アナと雪の女王』(ディズニー)は3週連続で1位を獲得しています。土日2日間の成績は動員69万1321人、興行収入は8億8121万2200円をあげたそうです。累計をみると、公開17日間で動員数が430万人、興行収入が52億円を突破したといいます。子どもの人口が減っているというのに、アニメ映画が驚異的な数字を積み上げているのです。このような現実を知ると、アニメに注目した企画になるのも当然といえましょう。ちなみにこの企画には豊島区が支援しているといいます。

豊島区は2004年に「文化創造都市宣言」をして以来、文化事業の展開によって着実に区のイメージアップ、動員効果を上げています。その結果、財政状況も改善させることができたようです。(http://toyokeizai.net/articles/-/28135

■アニメの動員力

6月に池袋で実施されようとしているアニメ祭。この企画からはいくつかのことが示唆されています。一つには、郊外型のシネコンに押され、都心部の映画館が不振だということ、都市間競争で優位に立つには文化政策が不可避であること、そして、もっとも示唆深いのが、アニメ関連事業でなければ多数の人々を動員できないこと、等々です。

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東京ビッグサイトで撮影した写真です。多数のアニメファンが集まりました。

ここ数年来、地方でアニメによる地域起こしが盛んなことは知っていましたが、東京でもそのような現象が起こっているとは驚きです。子ども人口が減っているというのに、この現象はいったい何を意味するのでしょうか。改めて考えてみる必要がありそうです。(2014/4/7 香取淳子)

 

 

 

 

 

アカデミー賞候補になった和風テイストの短編アニメ

アカデミー賞候補になった和風テイストの短編アニメ

■短編アニメ『九十九』

第86回アカデミー賞では、宮崎駿監督の『風立ちぬ』が長編アニメ賞部門、森田修平監督の『九十九』が短編アニメ賞部門にノミネートされました。残念ながら、両作品とも受賞は逃しましたが、日本アニメが2本もノミネートされたのは画期的なことです。とくに、世界的に認知度が高く、ファンも多い宮崎駿監督と並び、若干35歳の森田修平監督の作品が大きな評価を得たことは注目に値します。

この作品は、2013年7月に公開されたオムニバス映画『SHORT PEACE』の一編として制作されました。とてもユニークな内容です。本来、モノには生命がないはずですが、使い込まれていくと、そこにいつしか精霊が宿り、妖怪となって人間をたぶらかす・・・、といったモティーフの下で物語が展開されます。

15秒ほどのCM映像を見ていただきましょう。http://www.youtube.com/watch?v=PJfhKpayMog

森田監督はインタビューに答えて、次のように言っています(『intoxicate』vol.104)。

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アニメは情報を削除していく文化で、浮世絵にも通じるかもしれないですが、そういうのが日本は得意だと思います。逆にアメリカの映画は、情報を足すというか過剰にしていく。宮崎さんのアニメなどは、本当にちょっとしたことでも、奥が深いんですよね。さらに世界観も作れて、次は面白いストーリーとか・・・、いくらでも広がりが持てる」

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森田監督はこうもいっています(http://animeanime.jp/article/2014/03/02/17663.html

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以前から描いてみたかった「妖怪もの」というテーマを掘り下げてみたいという狙いでした。和のテイストの映像もあくまで物語から必然的に導かれたもので、特に和紙を用いたテクスチャは、モノに取り憑く「九十九神」を描くからには、物質それ自体の立体感や質感が重要になってくるだろうと最も試行錯誤を重ねた部分の一つです。

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さんざん使われたあげくに捨てられた傘に怨霊が宿ります。その怨霊はヒトをたぶらかそうとしますが、ヒトが丹念に修繕すると、その怨霊は供養され、鎮められます。その背後に、伝統的な日本人の生活価値観としての「もったいない」精神とどんなものにも生命が宿るとみなすアニミズムの精神を読み取ることができます。それこそ和風のテイストといえるものですが、『九十九』にはそれが随所に見受けられます。

たとえば、下の画像は傘の怨霊です。なんともいえない可笑しさがあります。このテイストがおそらく和風なのでしょう。怨霊さえも忌むべき存在ではなく、共存しうるものなのです。そのような世界観は「もったいない」といった使い込まれたモノを捨てず、繕って使い続ける精神に通じます。

日経新聞(2014年2月25日付)の記事では、森田監督が柳田国男の『山の人生』を愛読し、民俗学に興味を持っていることが紹介されています。民話の中には当該地域の生活倫理、生活価値観が組み込まれています。その底流には日本精神が潜んでいます。ですから、『九十九』で描かれた世界はまさに私たちが近代化の代償として忘れかけようとしている日本精神なのだといえるでしょう。(2014/4/6 香取淳子)

 

次世代に向けて:アニメ産業と教育の連携事業

次世代に向けて:アニメ産業と教育の連携事業

■練馬区のアニメに対する思い

4月2日、練馬区のアニメ産業支援について、練馬区商工観光課長の吉田哲さんにお話をうかがいました。

練馬区は全国でも珍しくアニメ産業を積極的に支援している自治体です。3月には試行的な取り組みとして動画マンを対象にキャリアアップ講座を実施しましたし、例年、豊島園で「練馬アニメカーニバル」、大泉学園で「アニメプロジェクトin大泉」などのイベントを開催しています。アニメが区内の産業活性化や区のアイデンティティ確立、ブランド化に寄与することを目指し、練馬区はさまざまな興味深い事業に取り組んでいるのです。その象徴が練馬区公式アニメキャラクターの「ねり丸」で、「アニメ・イチバンのまち 練馬区」をアピールするために作成されました。

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練馬区が展開しているアニメ関連事業の中でもっとも興味深いのが、「アニメ産業と教育の連携事業」です。これは平成22年度から実施されている事業で、練馬区内の小中学校にプロのアニメーターが出向き、子どもたちにアニメ制作を体験させるというプログラムです。主に総合学習あるいはクラブ活動の時間帯に行われています。25年度は19の学校で延べ23事業が行われました。

■アニメ産業と教育の連携事業

実践してみると、当初の目的をはるかに超える効果が得られたといいます。子どもたちはこの事業によって、アニメ産業を理解し、キャリア教育を体験できただけではなく、アニメ制作の過程では仲間との協働作業を通して、協調や忍耐、責任といったことも学ぶことができたようです。一方、講師役を務めたアニメ事業者からは、子どもたちと直に接触することで、新しいインスピレーションを受け、創作意欲をかきたてられたと報告されています。

教育委員会とアニメ事業者とをマッチングさせ、一つの事業として結実させた自治体の成果といえましょう。先進的なこの事業は平成25年1月31日、第2回キャリア教育推進連携表彰で奨励賞を受賞しています。

詳細はこちら。http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/01/1330493.htm

また、平成25年2月19日、第3回キャリア教育アワードで大賞を受賞しています。審査会の主な評価をみると、以下の3点に集約されます。

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・地場産業を活かし「プロのすごさ」を子どもが間近に実感する機会を提供している。
・教員向けのガイドや研修会が充実しており、プログラムにも柔軟性があるため、学校が取り入れやすいプログラムとなっている。
・地域の中で、小学校から大学、企業、NPO等関係者が連携しプログラムを構築している。

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以上、詳細はこちら。http://www.meti.go.jp/press/2012/02/20130220004/20130220004-1.pdf

一連の流れを見ると、練馬区がアニメ産業と教育の連携事業を構想し、実践することによって、各方面に大きな効果をあげつつあることがわかります。ただ、教育は地道な作業ですから、着実に継続していくことがなによりも大切です。そうすることによって初めて、さらなる効果につながっていくのだと思います。今年度の事業も間もなくスタートします。子どもたちとアニメーターとの新たな出会いが始まります。

■取組のさらなる充実を

クリエイティブ産業は次世代産業の一つとされています。中小企業が多いとはいえ、多くのアニメ関連企業を抱えている練馬区はその点で、大きな潜在資産をもっているといえます。その潜在資産を着実に顕在化させていくための基盤の一つとして、人材育成に関する事業、キャリア教育に関連する事業が重要です。「アニメ産業と教育の連携事業」というユニークな取り組みのさらなる充実を期待しています。(2014/4/2 香取淳子)

 

アニメの影響:制作会社はどこまで責任を負うべきか?

アニメの影響:制作会社はどこまで責任を負うべきか?

■『喜羊羊与灰太狼』

今年もまた1月16日に、中国全土でアニメ映画『喜羊羊与灰太狼之飞马奇遇记』が公開されました。ここ数年来、『喜羊羊与灰太狼』シリーズは正月になると公開され、毎回、大ヒットしてきました。国産アニメでは唯一といっていいほどの人気アニメだったのです。ところが、どうやら今年はそうではないようです。豆瓣(2005年に開始された中国のSNS)での評価を見ると3.8で、これまでになく低いものでした。評価者の一人は、ロジックは混乱しており、場面は嘘っぽく、笑いもこなれていない、これでは子どもたちに何を伝えたいのかわからない、と書いています。

 喜羊羊与灰太狼之飞马奇遇记( 2014 )

http://movie.mtime.com/206465/

■アニメ批判

実は、2013 年4月6日、中国では8歳と5歳の子供が人気アニメ『喜羊羊与灰太狼』のシーンを真似して友達に大怪我をさせてしまった事件がありました。以来、アニメの暴力シーンに対する批判が高まっていたのです。 ブロガーの百元籠羊氏はこれに関連して、中国国営放送のCCTVがアニメの悪影響についての番組を放送したことを明らかにしています。CCTVがアニメの「七つの大罪」として挙げていたのが、以下の内容であり、(  )内はその例とした挙げられた放送番組です。

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暴力を誘導する(喜羊羊と灰太狼)

身体の怪我や損壊を誇張して表現する(トムとジェリー)

「火遊び」の危険の軽視(トムとジェリー)

言葉が文明的ではない(中国国産アニメ「熊出没」)

悪ふざけ(クレヨンしんちゃん)

着飾って成人化する(セーラームーン)

ポルノを暗示(クレヨンしんちゃん)

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上記の詳細はこちら。http://kinbricksnow.com/archives/51862073.html

たしかに、日本でも「クレヨンしんちゃん」や「セーラームーン」が放送された当初、子どもへの悪影響が心配されたものでした。父母やPTAはこれらの番組にクレームをつけたのですが、子どもたちは見たがっており、一般の人々も大半が視聴についてはそれぞれの家庭で管理すればいいという意見でしたから、放送中止にはなりませんでした。もちろん、内容が修正されることもありませんでした。 ところが、中国ではこの暴力事件を契機としてアニメの子どもへの悪影響を心配する声が高まり、ついには国営放送CCTVが取り上げるほどになったのです。

■問われるアニメ制作会社の責任

ブロガーの百元籠羊氏は2014年1月20日、人気アニメ『喜羊羊』の真似をして子どもが友達に大怪我をさせた件で、制作会社がその責任を問われて告訴され、第一審の結果が出たことを報告しています。制作会社にはなんと原告の被害額の15%に相当する約3万9000元(日本円:約67万円)を賠償するよう命令が出されたのだそうです。これについてはネット上で様々な意見が寄せられました。制作会社ではなく保護者の責任ではないか、というものから、こんなことで規制されるなら、武侠モノもダメではないか、というもの、アニメ会社も子ども向けということを忘れて安易な表現に走りすぎていたというもの、実に多様な意見が寄せられています。

詳細はこちら。http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=82003

制作会社はアニメの影響について責任を持つべきという意見から、持つ必要はないという意見まで、さまざまな見解があることがわかります。ですが、事件の発生によって、アニメの影響に対する関心が高まり、大多数の意見が内容規制の方向に収斂していったことは事実でしょう。今年の『喜羊羊与灰太狼』映画の評価が例年のほどかんばしくなかったのは、ひょっとしたら、子どもたちの気持ちを手っ取り早く惹き付ける要素が希薄になっていたからかもしれません。

■子どもに対するメディアの影響

子どもに対するメディアの影響は古くて新しいテーマです。とくに暴力シーンの影響については、1960年代から1980年代までのアメリカでさまざまな観点から数多くの研究が実施されました。暴力シーンを見た子どもはそれを模倣し、暴力行為を働くようになるのだろうか。それが最大の関心事だったのです。

実験的研究から実態調査研究、参与観察研究などさまざまな研究の結果、子どもの年齢によって影響の度合いは異なるというもの、暴力シーンは暴力行為の単なる引き金にすぎないというもの、  記憶に蓄積されて後年、発現するというもの、暴力を容認する価値観が醸成されやすいというもの、カタルシス効果があるというもの、研究成果もまたさまざまでした。程度の差はあれ、暴力シーンが子どもになんらの影響をもたらすことは確かだといえます。

それではどうすればいいのか。子どもをメディアの影響から守るという点では、見せないこと(規制)によって守るという方法と、見せるが見せ方に工夫することによって守るという方法があると思います。見せないことによって守るという方法では、その反動でいつか見たときの影響が大きくなるかもしれません。また、いつまでも見せない環境下に子どもを置いておくこともできません。

それでは、規制をせずに自由に見せるが、見せ方に工夫することによって、子どもを守るという方法はどうでしょうか。私が考える方法は、保護者が子どもと一緒にアニメを視聴するというものです。一緒に見ていれば、子どもがどのシーンにどのような反応をしているのかわかりますし、暴力シーンなど、ネガティブな影響があると思われるシーンでは、保護者が批判的に視聴してみせることもできます。そのような経験をすると、子どもはアニメのシーンを無批判に受容するのではなく、保護者の価値観とセットでそのシーンを受容するようになります。ですから、子どもがアニメの影響をストレートに受けることの弊害は少なくなると思います。

ただ、この方法は保護者との信頼関係が築き上げられている場合、そして、保護者に時間の余裕がある場合に有効です。実際にはそうではない場合も多々あるでしょう。ですから、子どもにネガティブな影響を与える可能性のあるアニメについては、幼稚園や保育園などの公的な場で、教材として取り上げ、批判的に視聴する機会を持つようにするのがいいのかもしれません。

いずれにせよ、子どもたちは国境を越えて自由に情報が行き交うインターネットの時代を生きています。メディア規制がきわめて難しくなっている環境下で成長していかざるをえないのです。そのような現状を考えれば、規制するよりはむしろ、メディアリテラシーを養っていくことの方が現実的な対応ではないかと思います。(2014/3/31 香取淳子)

 

 

 

 

 

『アナと雪の女王』:最高の表現力と娯楽性

『アナと雪の女王』:最高の表現力と娯楽性

■多様な観客層

3月28日(金)、ふと思い立って、ユナイティッドシネマとしまえんに出かけました。ディズニーの『アナと雪の女王』(字幕版、13:40~15:40)を見てみようと思ったのです。上映スケジュールを調べると、字幕版が4回、吹き替え版が4回で、1日に8回も上映しているのはこの映画だけでした。念のため、29日(土曜日)のスケジュールを見ると、字幕版4回、吹き替え7回、30日(日曜日)は字幕版3回、吹き替え版6回でした。土曜、日曜はなんと11回、9回も上映されるのです。子ども連れが多いからか、吹き替え版が多く設定されています。これだけでも、この映画が日本でも大ヒットしていることがわかります。実際、開演直前の場内はほぼ満席でした。

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上の写真は上映40分前の売店前の光景です。字幕版のせいか、幼い子ども連れの姿はなく、10代から中高年層まで幅広い世代が観客層だということがわかります。

■白黒短編アニメと本編アニメ

本編の上映前に、白黒の短編アニメーション『ミッキーのミニ救出大作戦』が上映されました。子どものころ見たディズニー映画を思い出し、懐かしくなってしまいましたが、これはあっという間に終わってしまいました。次に、『アナと雪の世界』が始まったのですが、まず、実写よりもリアルに見える画面に見入ってしまいました。氷や雪、霜は実際にはあのようにはっきりと見えるでしょうか。そして、深みのある音響、心にずっしりと響きます。映像といい音響といい、否応なく作品世界に引き込まれてしまう技術力に驚きました。

主人公のアナやエルサの肌や髪の質感、一挙手一投足の動きも見事に表現されていましたが、顔のデザインには最初、やや違和感を覚えました。典型的な可愛さ、美しさでデザインされていなかったからです。ただ、見慣れていくうちに、とても魅力的に思えるようになりました。独特の顔つきだからこそ、アニメでありながら微妙な心理を表現することができ、キャラクターとしての奥行を感じさせることができたのだと思います。

登場人物の画像はディズニーの公式サイトで見てください。

詳細はこちら。http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki

手に触れるモノはなんでも凍りつかせてしまう魔力を持ったエルサ女王と妹のアナ王女。この二人を軸に、物語は展開されます。戴冠式の日、アナとエルサがちょっとした諍いをし、エルサの魔力のせいで王国が凍てついた冬に閉じ込められてしまいます。エルサは王国を去り、アナはエルサを追います。王国を冬の国から解除するにはエルサの魔力が必要だと思ったからです。

苦難の末、アナは北の王国にいるエルサに会うことができたのですが、エルサの魔力では王国を冬から解除することができません。「真実の愛」こそが解除できるということがわかり、アナはハンス王子との愛を示せば、解除できると考え、王国に急いで戻ります。ところが、彼はアナを利用しただけで愛していませんでした。アナを見捨てます。

■卓越した技術力

ハンス王子は戻ってきたエルサすら殺そうとします。エルサを助けようとしたアナが凍りはじめ、エルサは泣き崩れます。心底、妹アナを思う愛でした。その「真実の愛」によってアナは生き返り、王国も冬から解除されます。凍てついた氷の世界い色彩が戻っていくシーンが素晴らしかったです。

脇役として活躍したオラフ(雪だるま)、スヴェン(トナカイ)が作品に興を添え、音楽がとても素晴らしく、リズミカルでテンポがよく、大人も楽しめるアニメーション映画でした。見事なエンターテイメントになっていると思いました。氷や雪、霜といった白一色の世界、アナやエルサの折々の心理を反映させた顔の表情、いずれもアニメーションで表現するのはきわめて難しい領域だと思いますが、細部を微妙に描き分け、それを見事に表現していた技量を素晴らしいと思いました。

卓越した表現力と娯楽性に徹した作品づくりに圧倒されました。(2014/3/29 香取淳子)

 

 

 

 

 

 

 

 

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