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20日

中国のアニメ視聴者層は?

中国のアニメ視聴者層は?

■中国アニメ産業と消費調査報告

人民網日本語版によると、北京師範大学のデジタルメディア学部が2013年12月17日、『中国アニメ産業と消費調査報告』を発表したといいます。北京師範大学といえば、北京電影学院、中国伝媒大学とともに、中国ではアニメに関する主要な大学ですが、その北京師範大学がアニメ産業に関する調査研究を実施し、その成果を報告書としてまとめ、公表したというのです。

「中国のアニメ制作量は世界一」http://j.people.com.cn/95952/8490027.html

2008年から2012年までの五年間に中国のアニメ制作量は世界一、アニメーション映画の総興業収入も増加の一途を辿ってきました。ところが、中国国産アニメの一作品当たりの平均興業収入は減少しているというのです。その一方で、輸入アニメーション映画は国産の3.65倍もの興業収入を上げているといいます。政府が強力な支援策を講じているにもかかわらず、ヒット作を生み出せていないのが現状なのです。制作量が多いだけではアニメ大国とはいえません。

北京師範大学のホームページを見ると、報告書を2013年12月17日に正式に公表したことがわかります。報告書のタイトルは、『中国动漫产业与消费调查报告2008-2013』です。

すでに2012年から中国政府はアニメ制作の質の向上に向けてさまざまな政策をとっていますが、今回の調査はそのための市場調査であり、視聴者の意向調査であるといえます。人々に受け入れられる作品を制作するには、人々が何に関心を抱き、どのようなストーリーや表現に心を動かされるのか、どのようなキャラクターを好ましいと思うのか、といったようなことを把握していなければなりません。

■接触メディア

興味深いのは媒体についての調査結果です。下図はちょっと読みにくいですが、アニメ映画についての情報を知る媒体として最も多く接触しているのが、電子媒体で43.3%に及びます。

広大な地域に膨大な人口を抱える中国では今後ますます電子媒体の重要性が高まっていくと思われます。他の媒体に比べ、はるかに利便性が高いからです。電子媒体はもはや情報を得る手段としてだけではなく、情報を発信する手段としても重要な意味を持ち始めています。

この調査ではアニメ映画を見ている人の84%以上が40歳以下で、そのうちの29.8%が4年制大学以上の高学歴の人々だということがわかりました。この調査結果を踏まえて対策をとるとすれば、これまでのような子ども向けのアニメーション映画だけではなく、高学歴で成人の視聴者を対象にした作品を提供していかなければならないことがわかります。

中国が大学を基盤にアニメーション制作の基礎固めを行っているところを見ると、今後、優秀な人材が次々と誕生してくる可能性があります。次代を担う人材には、構想力や企画力、ストーリーの構築力だけではなく、コンピュータをベースとした表現力をもとめられてくるからです。アニメ先進国である日本もうかうかしていられない時代になりつつあるようです。(2014/03/20 香取淳子)

 

 

練馬区がアニメーターズ・キャリアアップ講座を開始。

練馬区がアニメーターズ・キャリアアップ講座を開始。

■アニメーターズ・キャリアアップ講座の開始

3月9日、練馬区が参加費無料のアニメーターズ・キャリアアップ講座を開始しました。動画制作の技能を向上させるために、練馬区に在住あるいは在勤の新人動画マンを対象に、3月9日、16日、21日の計3回実施されるというものです。

毎回、講義と実技指導を組み合わせたカリキュラムになっており、フリーアニメーターの名和誉弘氏(9日、担当:動画検査)、プロダクションI.G.取締役の後藤隆幸氏(16日、担当:作画監督・キャラクターデザイン)、アニメ私塾代表の室井康雄氏(21日、担当:原画・絵コンテ・演出)などが講師を務めます。平成25年度の練馬区アニメ人材育成支援事業として企画されました。

詳細は  こちら。http://anime-cu.jp/

■離職率の高いアニメーター

安倍政権の成長戦略の一つとして位置づけられているアニメ産業ですが、その実態はきわめて脆いのです。中小零細企業が多く、経営基盤が脆弱なのです。はたして次代への備えはどうなのでしょうか。実際、アニメーターを志してこの業界に入った若者が次々と辞めているのです。

以前、この問題について調べて書いた文章があります。その一端を紹介しましよう。

「新人は動画担当を三、四年経験すると原画担当になっていくのだが、収入が少ないのでそれ以前に退職してしまう人が多いといわれる。その結果、動画のキャリアを積んだ人材が足りず、原画マンが慢性的に不足している。国内で仕事をこなせないから動画の多くは東南アジアなどに発注され、原画マンが不足するという悪循環から脱却できないのである」

(香取淳子「日本アニメを考える」『放送レポート』2013年9月号、p.35)

動画制作工程には以前からこのような大きな問題があり、いまだに解決されていません。ですから、今回、実施された練馬区のアニメ人材育成支援事業はまさにこの課題に焦点を当てて行われたものといえます。動画マンはアニメーターとしての出発点であり、キャリアパスの初期段階だからこそ、新人動画マンに対する教育支援が必要なのです。

■人材育成の必要性

練馬区には約90社のアニメ関連会社があります。いってみれば、アニメ産業は練馬区にとって地場産業なのですが、その多くが中小零細企業ですから、次代に備えて自前で制作環境の改善や人材育成を行うことは難しいのです。将来に対する備えがなければ、競争力を持ち続けることはできません。

グローバル化が進み、メディア環境が激変する一方で、日本では少子高齢化が進んでいます。それに伴って、さまざまな領域で国際競争力を失いつつあります。アニメ産業もその一つですが、今回の練馬区の支援事業がこれまで営々として築き上げてきた日本のアニメ産業を自治体が支えていくための一つのモデルとして、他にも広がっていけばと期待しています。(2014/03/20  香取淳子)