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19日

幼児がテレビを見なくなった?

幼児がテレビを見なくなった?

■幼児の視聴時間はなぜ減ったのか

3月12日、NHK放送文化研究所主催の「春のシンポジウム」に参加しました。「幼児のテレビ視聴時間は、なぜ減ったのか」という安楽裕里子氏の報告にちょっと驚きました。

いま、2歳から6歳の幼児のテレビ視聴時間は1日平均、1時間49分なのだそうです。1980年代の前半に子どもとテレビの研究をしていた私にとっては意外な数字でした。1998年に2時間43分であった一日平均視聴時間はその後、長期的な減少傾向がみられ、この15年間で約1時間ほども下回ったというのです。

「 幼児の視聴時間はなぜ減ったのか」詳細はこちら。http://www.nhk.or.jp/bunken/symposium/2014/program.html#a

まだ文字を十分に習得していない年齢の子どもたちにとって、テレビは唯一の情報手段です。ところが、そのテレビを見る時間が減っているというのです。たしかに、普段、テレビを見ていても、子ども向け番組が少なくなったような気がします。そうはいっても、他に手段がなければ、子どもたちはテレビを見るはずです。ところが、そうではない。というのは、どういうことなのでしょうか。

安楽氏は資料を踏まえ、0歳から6歳までの子どもの生活時間を2013年と2003年を比較すると、2013年は拘束時間(幼稚園、保育園、外出)が57分増え、自由行動時間は1時間6分減少していることが明らかになったといいます。また、テレビ視聴時間は平日、日曜ともこの10年間で減少が顕著であり、録画番組、ビデオ、ゲームなどに使う時間は増えているといいます。

■多様な視聴覚メディアへの接触

NHK放送文化研究所の調査結果からは、子どもの余暇時間が減っていること、テレビだけではなく、ビデオ、ゲームなど多様な視聴覚メディアに接触していることが視聴時間減少の主因になっていることがわかります。安楽氏はさらに、最近の子どもがスマホやタブレットなどの機器にも接触していることをあげています。

興味深いことに、文字を十分に習得していない年齢の子どもたちの情報手段として、スマホやタブレットが登場しているのです。とくにタブレットはテレビとは違って、自分で操作を楽しむ要素もあります。画面をタップしたり、ピンチすることで、必要な情報を表示させたり、画面移動をしたり、拡大・縮小したりできます。タブレットにはカスタマイズできる面白さがあるのです。

■子ども番組の減少、新しいメディアの登場

私が「子どもとテレビ」について調査をしていた1980年代前半に比べ、新しい情報機器が子どもたちの生活環境の中に入り込んでいるのです。その一方で、子ども向け番組は圧倒的に減少しています。これは少子化の影響といえますが、生活空間の中でのこのような変化は子どもが子ども時代を生きることが難しくなったことを意味します。

かつて「7歳までは神の内」といわれた年齢の子どもたちが大人と同じような情報機器を手にし、大人が見ている番組を見ざるを得ない状況になっているのです。このような状況はおそらく、今後、ヒトの感性や行動、価値観に影響を与えていくのでしょう。どういう方向に向かっていくのか、生活時間、メディア接触時間といった項目を丁寧に追いながら、見つめていく必要があると思いました。(2014/03/19  香取淳子)