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米国アニメ

「アナと雪の女王」を支えた日本人アーティストたち

■大ヒットした「アナと雪の女王」

2013年11月27日に米で公開された「アナと雪の女王」は大評判を呼び、今年の米アカデミー賞の長編アニメーション部門と主題歌部門をダブル受賞しました。今年3月14日、日本でも公開され、連日、動員数を増やしていました。私も3月29日、この映画を鑑賞しました。エンターテイメント作品として非常に優れていると思いました。とくに印象に残ったのが、氷や雪、霜などの白一色の世界の表現です。

視聴後の感想はこちら。http://jc-media.org/?m=20140329

大人の鑑賞に耐えるアニメだと思った理由の一つは、識別しにくい白の世界を圧倒的な迫力で描き出した技術力でした。リアルな世界では決して見ることのできない凍てついた世界。これほどまでに美しいとは思いませんでした。感動させられたのは、この卓越した映像表現力でした。さすがディズニーだと思ったものです。

■日本人アーティストたちの仕事

沖縄タイムズ(2014/3/13)によると、久米島町出身の糸数弘樹氏がディズニー映画「アナと雪の女王」で、デザイナーの描いたスケッチを立体に起こす作業を担当していました。いわゆる3Dモデラーです。私が感動した雪や氷柱、壊れた帆船、背景の山や海岸などを担当したそうです。

糸数氏は「コンピューターソフトでつららを作ることはできるんですが、自動的に作ってしまうと、どうしても機械的な見た目になってしまうんです。アーティストのスケッチのようにはうまくできない。なので、モデラーが結局、全部手直しをして、アーティストのデザイン通りにつららを1本ずつ直していくんです。かなり地道な作業です」と語っています。(スポニチ アネックス、2014/5/4)

モデラーの仕事についてはこちら。https://www.facebook.com/permalink.php?id=433416190050585&story_fbid=489635971085301

糸数氏ばかりではありません。アニメーターとして制作に関わったのが、ミユキ・カンノ氏です。彼女が担当したのは、ヒロイン、アナです。冒頭でアナが「いつか王国を出て、世界を変えたい」と歌うシーンを手掛けました。アナがブランコに乗るシーンは自分でもブランコに乗って夫に撮影してもらい、その映像を参考にしながらリアルな動きを作り出したといいます。

さらに、マット鈴木氏は、アニマティック/レイアウトを担当しています。鈴木氏は、「もともと出身が雪国で、特に今回は雪や氷が主役クラスで描かれるので、このエフェクトのアニメーションは非常にエキサイトしています。カメラワークは責任重大。光が回らなかったりしたら、責任重大ですから。いかに美しく見せるかということを大切にしていますので、そこをぜひとも注目してもらいたいなと思います」と語っています。(スポニチ アネックス、2014/5/6)

そして、土井香織氏。彼女は3Dライティングを担当しました。苦労したのは水や氷だといいます。透明なものほどライティングは難しいといいます。土井氏は「ライティング担当は3人いるんですが、3人が全く同じライティングをしないといけない。(監督に)1コマ1コマずつチェックされて、またやり直してといった具合でした」と語っています。

以上、詳細はこちら。http://matome.naver.jp/odai/2139635800728998401

■ディズニーを支えた日本人のものづくり精神

日本人アーティストだからこそ、このように緻密な制作ができたのでしょう。徹底的に完成度を高めるという精神です。それがディズニーの作品の魅力を確かなものにしたのです。デイズニーは、”共感できるストーリー”、”魅力的なキャラクター”、”現実味のある世界”、これら3つの要素を重視して映画製作をしているといわれています。その一つである”現実味のある世界”、これを実現させたのが日本人アーティストたちだったといえるでしょう。その結果、この作品はいまなお世界中で観客を動員し続けています。歴史に残る作品になることは確かでしょう。(2014/5/8 香取淳子)

 

ディズニーに学ぶ集客力

ディズニーに学ぶ集客力

ディズニー映画といい、東京ディズニーランドといい、ディズニーはいまなお新鮮で、幅広く日本人の気持ちを捉えているようです。はたして、なぜか。その背景を探ってみたいと思います。

■ディズニーランド&ディズニーシー、合わせて6億人突破

2014年4月12日、ディズニーランドとディズニーシーへの入園者数が開園以来、6億人に達したと報道されました。開園されたのが、1983年4月15日の開園ですから、31年間でこれだけの動員数を果たしたことになります。

開園以来2010年までの入場者数の推移を示したのが下のグラフです。

 

資料:http://tdl-web.blogspot.jp/2011/04/blog-post_19.html

これを見ると、2001年から2002年にかけて入場者数は急増し、以後、高止まりしています。なぜ、2001年に急増したかといえば、2001年9月4日にディズニーシーが開園したからでした。以来、入場者数が高止まりしているのは、ディズニーが顧客満足度の高いサービスを提供しているからでしょう。

オリエンタルランドはIR情報として、入場者数の推移と各年度のイベント等の関連を示すデータを公開しています。この資料からなぜ、ディズニーの観客動員力が高いのかを考えてみたいと思います。

■データから見る動員数の推移

オリエンタルランドのIR資料室が発行しているファクトブックをみると、入場者数の増加は記念イベントの開催と密接に関係していることがわかります。

たとえば、1984年に開園して以来、年間1000万人程度だった入場者数が1989年には一挙に340万人ほど増加しています。それはこの年に開園5周年イベントが開催されていたからであり、また、舞浜駅が開業してアクセスしやすくなったからでした。グラフを見ると、なぜ動員数が増えていったのか、その理由がはっきりとわかります。

以後、毎年ほぼ1600万人から1700万人が入場していますが、2001年9月4日にディズニーシーが開園してからは一挙に2200万人台になりました。そして、翌年以降、入場者数は2500万人前後で一定しています。さらに、ディズニーリゾートが25周年を迎えた2009年には2700万人を超えています。大きなイベントが開催された年度に入場者数がぐんと増えている傾向が見られます。

ファクトブックはこちら。http://www.olc.co.jp/ir/pdf/factbook/2013/factbook_05.pdf

全体を通していえることは、1984年以降、一貫して入場者数が増え続けているということです。だからこそ、累計で6億人を突破するまでに至ったのでしょうが、その背景に何があるのでしょうか。

■ディズニーに学ぶファンと顧客の増やし方

4月16日、練馬区産業経済部経済課主催で講演会が開催されました。ディズニーで長年、社員教育を担当してきたJSパートナー代表取締役の福島文二郎氏が演者で、講演のタイトルは、「ディズニーに学ぶファンと顧客の増やし方」です。

なぜ、ディズニーランドはこれほどまでに人々をひきつけているのでしょうか。福島氏の話で最も印象に残ったのが、入場者に小さな感動をたくさん提供するということだということでした。それが予想外の感動を生み出す可能性につながり、幸せを感じてもらえるようになるというのです。

一方、ディズニーランドで働く人々は仕事に満足し、仕事を主体的に改善しようとする意欲を持ち続けているようです。ミスをすることがあれば、それはそのまま放置するのではなく、上司が叱ることによってミスが改善されていくだけではなく、新たなサービスになることもあったようでした。

ディズニーランドに行けば異次元の世界に浸ることができ、行かなくても、おそらく、夢のありかとして人々の心に存在することができているのでしょう。だから、これだけの入場者数を維持できているのだと思いました。映画だけではなく、ディズニーリゾートもまた夢を与えてくれます。つまり、ディズニーは一種の夢のブランドとして機能しているからこそ、いつまでも新鮮さを持ち続け、人々を引き付けているのでしょう。ディズニーの動員力の源泉は人々の夢見る気持ちを喚起する力ではないでしょうか。(2014/4/16 香取淳子)

 

 

 

 

 

『アナと雪の女王』:大ヒットの背景

『アナと雪の女王』大ヒットの背景

ディズニー映画『アナと雪の女王』が興行成績を更新しています。どうしてなのでしょうか。その背景を考えてみたいと思います。

■大ヒットを更新中

『THE PAGE』2014年4月7日付の情報によれば、4月6日までの累計動員は635万を超え、興行収入は77億円以上を記録したといいます。公開24日間で動員数600万人を突破したことになりますが、これは、ディズニー作品では、歴代No.1のペースなのだそうです。これで、100億円の大台を突破することは確実となり、今後どこまで数字を伸ばすかが期待されている状況だそうです。

さらに、本稿執筆の前日、13日時点で累計765万5206人、興行収入は92億8453万6150円になったということです。これだけ急速でかつ持続的な動員力はこれまでになかったことでした。これ様子では次週末までに100億円を突破するのは確実でしょう。

私も3月29日にこの映画を見て、惹きつけられました。迫力のある音楽、リズミカルな映像のテンポ、刺激的な画面展開といった要素が大人をも引き付けて離さないのです。作品全般の構成に切れ味がよく、卓越した映像技術、音声技術によってこれまでにない見ごたえのある優れた娯楽作品になっていると思いました。

『ぴあ映画生活』(2014年3月28日)によると、この作品は公開前から予告篇の映像を見た視聴者からネットで絶賛の声があがっていたようです。もちろん、先ほど述べたように、日本でも大ヒットしています。それではなぜ、この映画がこれだけヒットしたのでしょうか、資料を踏まえて、考えてみたいと思います。

■ヒットの背景①:家族中が楽しめる

まず、制作者側はどのようなスタンスでこの映画を製作したのか、みてみることにしましょう。ディズニー・アニメーション・スタジオの副社長・アンドリュー・ミルスタインは次のような見解をしめしています。

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観客に敬意を表して映画作りをするように心がけています。映画は観客と対話するものですからね。だから、観る方がそれぞれに解釈できるような作品づくりを心がけています。観た人それぞれが自由に解釈できるのが優れたアートの醍醐味ですから。

***********  以上、『ぴあ映画生活』(2014年3月28日)

公開後、多くの観客がこの映画について熱く語ったと彼はいいます。それは、この映画によって観客がなんらかの体験ができたからでしょうし、大きく引き込まれる要素があったかでしょう。あるいは、何か得体のしれない感情を喚起されたのかもしれませんし、意表を突かれる何かがあったのかもしれません。だから、見終えてもこの作品について誰かと話したくなる、意見をいいたくなるのでしょう。優れた娯楽作品ならではの観客の反応だったのだと思います。

「観た人それぞれが自由に解釈することができる」という要素が大きなヒットにつながったことは確かでしょう。私が見たのは字幕版だったので、20代以上80代(?)ぐらいまでが主な観客層でしたが、吹き替え版の時間帯は家族連れが多く見受けられました。「見る人がそれぞれ自由に解釈することができる」要素があるからこそ、連続5週も興行成績一位を維持できているのだと思います。つまり、幅広い層に受ける要素を含んでいることが重要です。

ネットを検索していて、以下に示すような興味深いタイトルの記事を見つけました。

「Critical Mass : We know the kids will like  ‘ Frozen’ , but will you?」(Inside Movies, Nov. 27, 2013)

これはアメリカでの公開日に書かれた文章です。このタイトルの中には大ヒットの要件が示唆されています。つまり、動員数の限界閾値に達するには、子どもが好きだというだけではなく、大人も好きになる要素がなければならないということです。そのような要素があれば、ある一定数を超えれば、それこそ天井知らずで伸びていくことも可能になります。

実際、中の文章を読むと、この映画は子どもだけではなく、パパもママも家族中が楽しめる要素が至るところに散りばめられていると書いています。アナ(Kristen Bell)とエルサ(India Menzel)雪だるま( Josh Gad)を演じた俳優たちが著名であるだけではなく、オリジナル歌曲は、『Avenue Q』や『The Book of Morton』などでトニー賞を受賞したRobert Lopez & Kristen Anderson-Lopez夫妻が作詞、作曲を担当しているのだそうです。大人の鑑賞にも耐えるよう緻密な工夫がされているのです。

■ヒットの背景②:タイムリーでタイムレス

この映画の監督を務めたのが、Chris Buck と Jennifer Lee です。彼らはどう考えてこの映画を製作したのか、記事から紹介しましょう。

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Chris Buck:

ずっとファンだったから、ディズニー・クラシックがもつ娯楽性やハート、音楽、楽しさは自然に表現できるんです。だから、物語やキャラクターに現代的な要素を盛り込むことで”タイムリー”であり、”タイムレス”な作品にしたいと思いました。

Jennifer Lee:

この映画には最新のテクノロジーがいくつも使われていますが、そんなことではアニメーションは特別なものにはなりません。私たちはアニメーションの視覚的な美しさや、異世界へと誘ってくれるような表現を愛しています。だから技術が進化しても、写実的にはしないであえて色彩を豊かにしましたし、雪であってもキャラクターの感情を表現できるように描きました。

*********** 以上、http://cinema.pia.co.jp/161214/56258/

Chris Buck 監督は、タイムレスとタイムリーな要素を重視しています。これまでのディズニーが持つ普遍的な要素(タイムレス)を引き継ぎながら、現代人の心を掴む現代的な要素(タイムリー)が欠かせないというのです。つまり、時代を超えてヒトの心に響く要素とその時代だからこそヒトの心をとらえられる要素が重要だというのです。

Jennifer Lee 監督も同様、過去のディズニー作品の要素を生かしながら、現代の観客の心を捉えられる作品づくりを目指したといいます。

興味深いのは、映画レポーターのTodd McCarthyがこの作品について以下のように述べていることです。

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この映画でもっともイライラさせられ続けたのは、脚本家の、主人公アナのセリフへのこだわりである。アナのセリフが一般的なアメリカのティーンズの口調をまねて作成されており、「you know」とか「freaked out」というようなセリフ、それ以外にも両親や姉エルサが使わないようなセリフが多かったことだ。アナはいったい、どこでそんなセリフを覚えたのだろうか?

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以上、http://hollywoodreporter.com/movie/frozen/review/652699

たしかに、一般庶民と接触せずに生活してきたアナがどうして、両親や姉エルサが使わないような言葉を口にしているのか、考えてみれば不思議です。この点について、字幕か吹き替えで視聴している日本人はそれほど気にならなかったと思いますが、このレポーターはそれが気になったようです。現代的要素を加えようとしたあまり、一部の観客には不評を買った側面もあったのではないでしょうか。

また、彼は主人公のアナとエルサの顔についても違和感を覚えています。他のキャラクターの顔はそうでもないのに、主人公二人が人工的で大きすぎる頬に小さな上向きの鼻の無邪気な顔をしているが、それはいかにも作り物っぽく見えるし、無表情で、慣れるのに時間がかかるともいっています。

私もこの映画を見たとき、アナとエルサの顔のデザインに違和感を覚えました。なかなか馴染めなかったのですが、時間が経つとかえって、この特異な顔が魅力的に見えてきたのです。

いわゆる「美しい」や「可愛い」顔ではなかったのも、ひょっとしたら、制作者側の意図だったのかもしれません。実際、私自身、主人公の顔に違和感を覚え、画面を注視しないわけにいかなかったのです。注視し続けてようやく、違和感から魅力への印象転化が可能になったのです。

 

■ヒットの背景③:これまでとは違った悪役の創出と配置

Jennifer Lee 監督にはストーリーやキャラクター設定にもこだわりがあったようです。

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もちろん、最初はエルサは悪役でした。基にしたアンデルセンの童話でもそうなっていますしね。でも、私たちが最も描きたいものは”愛”と”恐れる心”の対立で、魔女的なものを登場させると、どうしても”善と悪の対立”になってしまうんです。・・・(略)

思い切って”魔女”の要素を排除したら、急に自由度が増して”愛と恐れる心の対立”が現代の問題として描けるようになりました。

***********  以上、http://cinema.pia.co.jp/161214/56258/

このようにしてディズニー作品では定番だった魔女が悪役として主要な役割を演じることはなくなりました。ディズニーの伝統を踏まえながらも、陳腐になりがちで、現代人の心に響かない要素は排除したのでしょう。

ディズニー映画から典型的な悪役を排除したことに関し、Moira Elizabeth Mannard は、それがこの映画の成功の要因の一つだとエッセイで書いています。つまり、貴族であり、魅力的に見えるハンスは誰が見ても悪役には見えません。だからこそ、アナが留守中の城や住民の保護管理を頼んだのでした。それが最後になって実はそうではなかったということがわかります。そのようなぎりぎりのどんでん返しが興を呼んだというのです。

■ヒットの背景④:狂言回しの創出

さらに彼女は、雪だるまのオラフの設定が秀逸だったといいます。コミカルで場を和ませるだけではなく、「真の愛」に至るまでの展開で重要な役割を果たすからです。

 

 

オラフについて彼女は、子ども観客に向けて作られたキャラクターであり、子どものころのアナとエルサが作ろうとしていたものだといいます。

いわれてみれば、たしかに、ストーリーの最初で大きな役割を果たしたのは雪だるまでした。その後、アナがエルサを探す旅に出かける途上で出会ったのが雪だるまのキャラクター、オラフでした。以後、クライマックスに至る過程、物語の収束に向けての過程でもオラフは重要な役割を果たすキャラクターとして設定されています。

雪だるまのオラフは、熱くなればすぐにも溶解してしまい、常温でも存在できない異様なキャラクターです。それが一種の狂言回しとしてこの物語を展開させていくという役回りを担わされているのです。そこにこの映画の成功の秘訣の一つがあったとみるのは納得できます。とにかく、実際に見ていて、面白いし、このオラフが登場するだけで画面が和みます。

劇場で笑い声がおこるのも、オラフが登場したときでした。オラフのセリフ、一挙手一投足に異次元の可笑しみがあります。だからこそ、登場するだけで、観客の緊張は一気にほぐれ、溜まっていた感情が発散されてしまいます。優れた娯楽作品ならではのキャラクターの魅力とヒトの感情を喚起する力があります。

■大ヒットの秘訣

実際に映画を見たときに気持ちを踏まえ、さまざまな資料に基づき、この映画の大ヒットの秘訣を探ってみました。現時点では、とりあえず、①家族中で楽しめる、②普遍性と現代性、③新しい悪役の創出と物語の中での配置、④狂言回しの創出、等々、4つの要因がこの映画のヒットの背景にあることが考えられます。(2014/4/14 香取淳子)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アナと雪の女王』:最高の表現力と娯楽性

『アナと雪の女王』:最高の表現力と娯楽性

■多様な観客層

3月28日(金)、ふと思い立って、ユナイティッドシネマとしまえんに出かけました。ディズニーの『アナと雪の女王』(字幕版、13:40~15:40)を見てみようと思ったのです。上映スケジュールを調べると、字幕版が4回、吹き替え版が4回で、1日に8回も上映しているのはこの映画だけでした。念のため、29日(土曜日)のスケジュールを見ると、字幕版4回、吹き替え7回、30日(日曜日)は字幕版3回、吹き替え版6回でした。土曜、日曜はなんと11回、9回も上映されるのです。子ども連れが多いからか、吹き替え版が多く設定されています。これだけでも、この映画が日本でも大ヒットしていることがわかります。実際、開演直前の場内はほぼ満席でした。

IMG_0765 (640x480)

上の写真は上映40分前の売店前の光景です。字幕版のせいか、幼い子ども連れの姿はなく、10代から中高年層まで幅広い世代が観客層だということがわかります。

■白黒短編アニメと本編アニメ

本編の上映前に、白黒の短編アニメーション『ミッキーのミニ救出大作戦』が上映されました。子どものころ見たディズニー映画を思い出し、懐かしくなってしまいましたが、これはあっという間に終わってしまいました。次に、『アナと雪の世界』が始まったのですが、まず、実写よりもリアルに見える画面に見入ってしまいました。氷や雪、霜は実際にはあのようにはっきりと見えるでしょうか。そして、深みのある音響、心にずっしりと響きます。映像といい音響といい、否応なく作品世界に引き込まれてしまう技術力に驚きました。

主人公のアナやエルサの肌や髪の質感、一挙手一投足の動きも見事に表現されていましたが、顔のデザインには最初、やや違和感を覚えました。典型的な可愛さ、美しさでデザインされていなかったからです。ただ、見慣れていくうちに、とても魅力的に思えるようになりました。独特の顔つきだからこそ、アニメでありながら微妙な心理を表現することができ、キャラクターとしての奥行を感じさせることができたのだと思います。

登場人物の画像はディズニーの公式サイトで見てください。

詳細はこちら。http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki

手に触れるモノはなんでも凍りつかせてしまう魔力を持ったエルサ女王と妹のアナ王女。この二人を軸に、物語は展開されます。戴冠式の日、アナとエルサがちょっとした諍いをし、エルサの魔力のせいで王国が凍てついた冬に閉じ込められてしまいます。エルサは王国を去り、アナはエルサを追います。王国を冬の国から解除するにはエルサの魔力が必要だと思ったからです。

苦難の末、アナは北の王国にいるエルサに会うことができたのですが、エルサの魔力では王国を冬から解除することができません。「真実の愛」こそが解除できるということがわかり、アナはハンス王子との愛を示せば、解除できると考え、王国に急いで戻ります。ところが、彼はアナを利用しただけで愛していませんでした。アナを見捨てます。

■卓越した技術力

ハンス王子は戻ってきたエルサすら殺そうとします。エルサを助けようとしたアナが凍りはじめ、エルサは泣き崩れます。心底、妹アナを思う愛でした。その「真実の愛」によってアナは生き返り、王国も冬から解除されます。凍てついた氷の世界い色彩が戻っていくシーンが素晴らしかったです。

脇役として活躍したオラフ(雪だるま)、スヴェン(トナカイ)が作品に興を添え、音楽がとても素晴らしく、リズミカルでテンポがよく、大人も楽しめるアニメーション映画でした。見事なエンターテイメントになっていると思いました。氷や雪、霜といった白一色の世界、アナやエルサの折々の心理を反映させた顔の表情、いずれもアニメーションで表現するのはきわめて難しい領域だと思いますが、細部を微妙に描き分け、それを見事に表現していた技量を素晴らしいと思いました。

卓越した表現力と娯楽性に徹した作品づくりに圧倒されました。(2014/3/29 香取淳子)